目次
はじめに
東京オリンピックのエンブレムでいろいろと問題となったロゴ・エンブレム(後述:ロゴで統一)。
昔はデザイナーが依頼を受けて作るというのが主流でしたが、今はロゴジェネレーターで無料作成できるものから、WEB上でのコンペ方式、既に出来上がったロゴを購入するなどいろいろな方法でロゴ制作が可能になっています。
http://www.squarespace.com/logo/
価格もピンキリ。例えば、ロゴジェネレーターを使えば今風のシンプルなフラットなロゴも簡単に無料で制作できます。
https://www.fiverr.com/categories/graphics-design/creative-logo-design
自分ではちょっと…という方、既に出来上がったロゴを購入する方法もあります。こちらのサイト(fiverr.com)5ドルもあれば、購入できます。
ランサーズなどのクラウドソーシングの場合は大体1万円から5万円以内でしょうか。100近い案を見て、その中から好きなものを選ぶということができます。
デザイナーが制作する場合の価格もピンキリで、3万円で作る人もいれば、10万円で作る人もいます。制作会社の場合も同じで10万円~100万、有名なデザイナーにもなると何千万など、実力・実績に加え、関わる人の数、かける時間の量など加味して価格が決められます。
最近は余計なものをそぎ落としたシンプルなロゴが多いため、こんなの簡単につくれそう…と思う方も多いかと思いますが、デザイナーが真摯に作るロゴには「深い考えとデザイン思想」+αが入っています。
今回はそんな捉えるのが難しいロゴをデザイナーはどのように作っているか?ざっと解説をしてみようと思います(中川のケースですが…)。
ロゴデザインの作り方 目次
- ヒアリング
― 基本情報を聞こう
― 一番、伝えたいことは?
― 課題とは?
― 市場の中での位置付け
― アンケート - リサーチ
- 情報をまとめて、コンセプトを作る
- 文字を組んでみる
― 文字を探す
― 文字を確認する - ロゴマークをスケッチする
― スケッチする
― スケッチした形状を眺める - グラフィックでデザインする
- 仕上げる
― ロゴを完成させる(白黒)
― カラーを決める
― バリエーション - 使用マニュアルを作成する
― 画像一式を作成する
1.ヒアリング
基本情報を聞こう
まずはクライアントの基本情報をヒアリングして、まとめます。
- お店・会社の名前(英語名、日本語名)
- どこにあるのか?(支店があれば、支店も)
- いつ設立したのか?
- 従業員数
- 商品、またはサービスの内
- 競合会社の名前
一番、伝えたいことは?
お店・会社が大事にしていること、ミッションは何かヒアリングします。
課題とは?
ロゴをリニューアルするということは、現在、課題があり、解決をするためです。クライアントが抱えている課題は何なのか?ヒアリングします。
それをデザインでどう表現し、解決に導くのか、デザイナーの腕の見せ所です。
市場の中での位置付け
市場の中での位置付けをクライアントに聞きます。付加価値をつけた高級路線、多くの人に商品を届ける路線など、クライアントがイメージしている位置付けは何のか理解する必要があります。
アンケート
以下のQAをクライアントにメールで聞きます。
- 顧客が関心を持っていることは?(方向性、対象にアピールするポイント)
- 顧客はサービス、商品に関する知識をどのように得ているのか?(どこで使用されているか、知る必要あり)
- なぜ新しいロゴが必要なのか?(新しいアイデンティティが必要な訳)
- 会社から連想される言葉は?(プロフェッショナル、伝統的等…)
- どのように種類のロゴが顧客にアピールすると思いますか?(顧客の好みの視点で)
情報はデザイン仕様書として、すべてまとめておきます。
2.リサーチ
WEBサイトや雑誌、パンフレットなどを見て、クライアントのことをリサーチします。
- クライアントの活動、歴史
- 現行ロゴの効果
- 競合会社のブランド戦略
などポイントを絞ってリサーチします。
3.情報をまとめて、コンセプトを作る
マインドマップなどを使って、コンセプトを考えます。
キーワードを思いつく限り書き出します。そして、翌日、見てみる。ヒアリングした内容にも合う、ぼんやりイメージできるようなキーワードは必ず見つかるはずです。
4.文字を組んでみる
お店・会社の名前である文字を組んでみます。組む前にお店・会社の名前が英語なのか、日本語なのか?
英語の場合、大文字、小文字などしっかり確認しておきます。(コンセプトによっては既存の名前と異なるアプローチとして、大文字から小文字など変わるかもしれません。)
文字を探す
「セリフ体」、「サンセリフ体」と両方で組んでみます。有名なフォントからPCにコレクションしている無名のフォントまでざっくり組んでみます。
具体的にはフォント閲覧ソフト「NexusFont」やApple アプリ「Typefaces」などでロゴの名前となるフォントをざっくり眺めます。そして、気になったフォントをIllustratorでまとめます。
文字を確認する
Illustratorでまとめたフォントを印刷し、眺めます。そして、第三者の意見も聞き、どのフォントが一番コンセプトにそったものか確認します。
確認した後、候補をいくつか絞ります。
5.ロゴマークをスケッチする
多くの本で書かれているのはロゴをデザインする前にまずはスケッチをすること。
スケッチする
考えられる形状をノートにスケッチします。コンセプトを意識し、思いつく限りの形状を書きます。頭をアウトプットの状態にし、移動中、食事中、就寝前など思いついたら、そく書き出します。
スケッチした形状を眺める
少し時間をおき、眺めます。コンセプトに沿っている形状は何なのか?
第三者の意見も聞くようにします。
6.グラフィックでデザインする
ある程度、形状が出つくし、「きらりと光るもの」があれば、それをIllustratorでトレースします。
選んでおいたフォントと組み合せて、文字の感覚、大きさ、太さなど調整します。カラーは入れず、白黒で作ります。
いくつか案ができたら、クライアントに提案です。コンセプトからデザインの至るプロセスをわかりやすく論理的にまとめて、提案します。提案資料はGoogleスライド、PowerPointなどでシンプルに作成。
7.仕上げる
ロゴを完成させる(白黒)
クライアントの意見を聞き、修正、やり直しをしながら、仕上げていきます。
最初にいろいろヒアリングし、情報を集めてコンセプトを練ったから大丈夫…と思っても、実際に出来上がったものが、クライアントの好み、考えに合わないことはしばしばおこります。
ここは辛抱強く、「これだ!」というものを作るよう心がけます。にっちもさっちもいかない時は己の直感、野生の感で勝負。これでもか、これでもかと繰り返す中で光るものは必ず見つかります。あきらめず、心を折らず、考え続けるのが重要ですね。
カラーを決める
ロゴの形状、フォントも大事ですが、カラーも大事なお店・企業の顔の一つ。カラーパレットを作り、コンセプトに合うカラーを選びます。
完成したロゴに選んだカラーを入れ、一枚ものでまとめてみます。印刷し、確認。ipadやスマホなどでも確認します。
最終的にはわかりやすく提案し、クライアントに決定していただきます。
バリエーション
ロゴ完成後、そのロゴを派生させたロゴを作成します。
- マークのみ
- テキストのみ
- ネイティブ(白抜き)
など使うであろうバリエーションのロゴも作成します。
8.使用マニュアルを作成する
マークとテキストの幅、カラーなど様々な個所で使用することを想定してマニュアルを作成します。
ロゴ素材はIllustratorのAIファイル、PDF、JPG画像、PNG画像で納品。
最後に
初めてロゴを作った時、ロゴなんてシンプルなもの簡単だろう?と考えていました。
提案していく中で気づかされましたが、実際に自分が作ったのはクラインアントの思いとは別の「ただ単に自分が作りたかったロゴ」。自分の好みに合わせ、コンセプトをないがしろにし、独りよがりのロゴでした。そんなロゴはもちろん受け入れてもらえるはずはありません。
苦い経験を経て、本を読みあさり、知り合いのデザイナーに意見を聞いたり、試行錯誤の中、ここ最近やっとクラインアントにも喜ばれるロゴが制作できるようになりました。ロゴはお店・会社の世界観、大事にしていること、ビジョンや思いといった一番重要なものを凝縮して、シンプルな一つの形として表現します。
たまたまペンを走らせできることもあれば、何カ月も思考とスケッチ、デザインを重ね、ようやくできるものもあります。神秘的ですが、よいロゴはそのできあがる一瞬のひらめきのようなものを読み解き、キャッチして出来上がるような気がします。そんなことを考えて制作しているせいか、ロゴ制作は非常に時間がかかってしまします。
それでもやっぱりロゴ制作は楽しい。クラインアントと真剣勝負で挑む、そんな感じがして、ヒリヒリします。これからもそんなロゴを作っていきたいですね。